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2026.01.26
政策や政治家に対する人々の態度は、政策の内容に対する賛否以外にも様々な心理的要因に影響される。ポピュリズムもそうした要因の1つである。人々のポピュリズム的な態度は、特定の政治勢力への支持に、政策に対する評価とは別の形で作用しうる。日本でもポピュリズムが本格的な議題となっている一方、ポピュリスト態度を測定・分析する試みはまだ限られており、今後も研究が求められる。
NIRA総合研究開発機構は、2025年7月にオピニオンペーパー「「理」と「情」に訴える情報発信:ナラティブがもたらす納得と共感」を公表した。本ペーパーは、人々にとって納得感のある政策を形成するための方策として、「理」だけではなく「情」の側面にも目を向けることの必要性を改めて提起する。
人々は、政策や政治家に対する自身の態度を、政策の中身をきちんと吟味した上で合理的に決めているとは限らない。全く同じ政策に対しても、嫌いな政党が掲げていると知ればより強く反対する、あるいはプロモーションの仕方に好感を持てば支持するなど、政策の内容以外の様々な要素が関係する。政策が受け入れられるために重要なのは、内容のよい政策を考えることだけではないというのが、全体を貫く基本的なスタンスである。
近年盛んに語られるポピュリズムの概念も、似たような文脈の中に位置づけることができる。ポピュリズムは、それ自体が「政策は政治家ではなく人々が直接決定すべきだ」といった考え方、あるいはイデオロギーとして理解できる。しかし、イデオロギーといっても特定の政策的内実を持つわけではない(ミュデ・カルトワッセル 2018)。ポピュリズムもまた、政策的な中身に対する賛否とは異なる形で、特定の政治勢力に対する態度に影響しうる要因である。
欧米のみならず日本でもポピュリズムが本格的な議題となっているが、ポピュリズムは日本においてどのくらい拡大しているのであろうか。人々がどの程度ポピュリズムに親和的な考え方を持っているか、いわゆる「ポピュリスト態度(populist attitude)」を日本において測定・分析する試みは、まだかなり限られている。
NIRA総合研究開発機構が実施する「NIRA基本調査」では、ポピュリスト態度に関連する質問として「いまの政党や政治家は腐敗しきっており、人びとの敵をやっつける強い指導者が必要」と「政策を決定する際には、ふつうの人びとの意見を優先するべきだ」という2つの質問を入れている。
分析結果の1つを紹介したい(NIRA総合研究開発機構 2025)。2024年のNIRA基本調査データを使ってポピュリスト態度を分析した谷口(2024)と同様に、上記の2つの質問の双方に肯定的(「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」)に回答した人を「ポピュリスト志向」とし、全く同じ基準で2024年と2025年の調査結果を比較した(図1)。全体として「ポピュリスト志向」に該当する回答者の割合は4%ポイント程度増加しており、その増加の要因として主に60歳以上のグループの影響が大きくなっている。この1年でも、シニア層を中心に、日本においてポピュリスト態度が広まっていることが分かる。
図1 ポピュリスト志向の世代別の変化
今後も、ポピュリスト態度と左右や保守・リベラルのような政策をめぐる対立軸との関係、あるいは共通の質問項目を用いた日本と諸外国の比較など、日本のポピュリスト態度の現在地をさらに詳しく明らかにする取り組みが求められる。
参考文献
執筆者
竹中勇貴(たけなか ゆうき)
NIRA総合研究開発機構研究コーディネーター・研究員

