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2024.10.24
石破茂総理大臣は首相就任後初の外遊として、ラオスでのASEAN関連首脳会議に出席した。日・ASEANの友好協力は昨年で50周年を迎えたが、近年、経済成長目覚ましいASEANへの認識を、日本はアップデートする必要がある。戦後の国際秩序が大きく変動する中、日本とASEANが互いを補完し高め合う関係性を構築することは、国際社会において、アジアの地位や日本の存在感を高めることにつながるはずだ。
急務となる日・ASEANパートナーシップの再構築
石破茂総理大臣は、首相就任後初の外遊として、10月11日にラオスで行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に出席した。27日に衆議院選挙を控える中、ASEANとの対話を外交デビューの場として選んだことは、どのような意味を持つのだろうか。
日本とASEANは昨年、友好協力50周年という節目を迎えた。関係の始まった当初、ASEANは日本にとって、政府開発援助(ODA)の支援先であったが、近年は、若い人口構成や中間層に支えられ、ASEANの経済成長は目覚ましい。さらに、中国やロシアが力による権力拡大を進めようとする中、アジアの安定のために、日・ASEANのパートナーシップを再構築することは重要だ。わたしの構想No.73「日・ASEAN、21世紀のパートナーシップへ」では、これからの日・ASEANの協力のあり方を探っている。
図1 各国の実質GDP成長率
日本の認識をアップデートし21世紀にふさわしいパートナーへ
ASEAN日本政府代表部の紀谷昌彦大使によると、ASEANはインド太平洋の地政学的要衝であり、力による一方的な現状変更の試みを抑止する上で一層重要となっている。さらに、ASEANではデジタル化が急速に進んでおり、多様性の尊重や多文化の共生など日本より先行している面も多く、かつての「支援する側・される側」という関係性から、「真に対等なパートナー」へと、日本の認識をアップデートすべきだと指摘する。
また、東アジア・アセアン経済研究センターの渡辺哲也事務総長も、日・ASEANのパートナーシップを「21世紀」にふさわしいものにする必要性を説いている。そのためには、両者が対等な関係であることを認識し、50年間の友好協力で培ってきた信頼をベースに共に課題解決に取り組むべきという指摘は、紀谷大使と共通する認識だ。伸びゆくASEANの活力と日本の成熟社会の経験が補完できるような関係を作り、これまで培ってきた信頼の絆を次の世代へつないでいくべきという主張は、これからの日・ASEAN関係を考える上で重要な示唆であろう。
スタートアップが盛んなASEANの若いエネルギーと、長きにわたって培われた日本の技術力が組み合わされば、新しいイノベーションを生むことも可能である。戦後の国際秩序が大きく変動する中、日本とASEANが新たな協力関係を構築することは、国際社会において、アジアの地位や日本の存在感を高めることにつながるはずだ。G7が代表する「大西洋ネットワーク」と、ASEANを核とする「インド太平洋ネットワーク」との橋渡し役こそ、アジアの先進国たる日本に今求められている役割だろう。
参考文献
NIRA総合研究開発機構(2024)「日・ASEAN、21世紀のパートナーシップへ」わたしの構想No.73
執筆者
川本茉莉(かわもと まり)
NIRA総合研究開発機構主任研究員