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全国的な広まりを見せるコード決済

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2024.01.25

近年のキャッシュレス化で台頭しているコード決済等は、その普及に地域差があるのだろうか。本記事では、NIRA総研で実施した「キャッシュレス決済実態調査」のデータを用い、2018年と2023年における地域別のコード決済等の決済額比率を分析した結果を報告する。

 NIRA総合研究開発機構は、2018年8月および2023年8月に「キャッシュレス決済実態調査」を実施した。その結果、QR・バーコードおよびスマホのタッチ決済(以下、「コード決済等」)が、年齢や地域にかかわらず、満遍なく広まっていることが明らかとなった。

 図1を見ると、2018年に全国的にほぼ0%だったコード決済等の決済額比率の予測値は、2023年には軒並み上昇し、10%を超えるようになったことがわかる。地域間のばらつきは見られず、全国的に普及が進んでいる。

図1 地域別に見たコード決済等の決済額比率(予測値)

図1 地域別に見たコード決済等の決済額比率(予測値)
(注)2018年、2023年それぞれのデータにおいて、コード決済等の決済額比率を性別、年齢層、世帯の所得階層、性別と年齢層の交差項、年齢層と世帯の所得階層の交差項、就業形態、大卒ダミー、地域に回帰。推定結果に基づき、地域以外の変数については各地域の平均値と仮定して、地域別の予測値を計算し、95%信頼区間とともにプロットした。
(出所)NIRA総合研究開発機構(2018、2023)「キャッシュレス決済実態調査」

 図1は、個人のコード決済等の決済額比率を、性別や年齢、世帯の所得階層などの属性に回帰し、地域以外の変数を各地域の平均値と仮定した場合の予測値を算出して作成した。2018年と2023年の予測値(点)とロバスト標準誤差から算出した95%信頼区間(エラーバー)を、地域ごとに示している。個人のコード決済等の決済額比率は、「食料品」や「日用品」等の商品・サービスの直近の支払いに使った決済手段を尋ねた同調査のデータと、全国家計構造調査(旧全国消費構造調査)の世帯年収別の1か月あたり平均支出額(品目別)から算出した。

 回帰分析の結果、首都圏と他の地域との間に有意な差がないことがわかった。これは、性別や年齢、所得が同じであれば、住んでいる地域によってコード決済等の決済額比率が変わらないことを意味する。全体のキャッシュレス決済額比率が中国・四国や九州・沖縄で首都圏より低いことを考えると、この特徴は注目に値するだろう。

執筆者

関島梢恵(せきじま こずえ)
NIRA総合研究開発機構研究コーディネーター・研究員

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