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日本経済と持続可能な成長

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高齢者が活躍できる社会へ

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2020.02.25

 日本では人口減少・少子高齢化が進み、労働力人口減少への対応が大きな課題となっている。高齢者の人口比率が高まる中、今後ますます、シニアを含めたあらゆる人材の活用が重要となる。現在、高年齢者が安定的に雇用される制度が検討され、見直されているが、現場の環境整備には課題が残っている。高齢者に対しては依然、差別や偏見、いわゆる「エイジズム」がある。重要なのは高齢者を正しく理解し、どうサポートすればいいのかを考え、高齢者が活躍できるような環境を整備していくことである。

求められる高齢者の労働参加

 日本では人口減少・少子高齢化が進み、労働力人口減少への対応が大きな課題となっている。1950年には1人の高齢者(65歳以上)に対して現役世代(15~64歳)が12.1人いたが、2015年には高齢者1人に対して現役世代2.3人、2065年には1人の高齢者に対して1.3人の現役世代という比率になる見通しである。今後ますます、シニアを含めたあらゆる人材の活用が重要となる。

 2020年2月4日、日本政府は高年齢者雇用安定法などの改正案が閣議決定した。同法は、高年齢者の安定した雇用の確保を促進することを目的としている。従来は65歳までの雇用確保を義務付けるものであったが、年齢を70歳まで引き上げる。加えて、企業に義務付けられる措置について、従来は「定年廃止」、「定年延長」、「再雇用制度の導入」のいずれかであったが、「フリーランス契約への資金提供」や「起業支援」などが加わり、企業はより柔軟な対応が可能となる。

働き続けたい高齢者

 わたしの構想No.20「シニア世代の能力を生かせ」でNIRA総研の柳川理事は「高齢者と呼ばれる世代の人たちを、単に支えられる存在とみなすのではなく、実態に則した形でよりよく活動できるようにすることが必要だ。」と指摘する。

 「経済的な理由」、「健康維持のため」、「社会や人とのつながりを持ちたい」など、理由はさまざまであるが、多くの高齢者は働きたいという意欲を持っており、安定雇用が得られるような環境を整備することは望ましいといえる。内閣府「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査」によると、60歳以上の男女全体のうち28.9%、また、現在就業している60歳以上の男女のうち42.0%が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答している。

制度だけでなく、環境の整備も必須

 上記でみたように、高年齢者が安定的に雇用される制度が検討され、見直されているが、高齢者が働く現場の環境整備は進んでいるのだろうか。長田久雄桜美林大学教授はわたしの構想No.20で、「超高齢社会である日本において、高齢者の就業が必要不可欠になりつつあるが、現状、十分な就労の機会が与えられていない。」と主張している。その原因として、高齢者への差別や偏見、いわゆる「エイジズム」がある。社会や企業には、高齢者の能力を過小評価する風潮が根強い。一方で、過大評価も注意が必要だ。高齢者の老化は確かに起こるものであり、暗いところでの作業ではリスクが高まったり、能率が悪くなったりもする。重要なのは、高齢者に対する正しい理解であり、どうサポートすれば高齢者が無理なく安全に働けるのかを考え、その仕組みを作り、就労促進していくことが求められる。

 日本人の平均寿命は伸び続けており、「人生100年時代」へと着実に近づいている。老後の経済的な不安を抱える人も多い中、高齢者をはじめとした、あらゆる人が元気に安心して活躍し続けられる社会を作っていくことが重要であり、高齢者の安定的な雇用の確保はそのための最重要課題の一つである。企業にとっても、人手不足の解消が深刻な状況にあるため、高齢者が戦力となることは大きなプラスになるだろう。そのためには、高齢者が継続して雇用されるような制度を考えるだけでなく、高齢者を正しく理解し、活躍できるような環境を整えることが求められる。近年、高齢者の健康寿命は延び、体力も向上している。社会はこうした高齢者の変化を、積極的に生かすべきである。高齢者には長年の経験による知識や対応力といった強みがあり、社会が高齢者を十分に生かせないのは極めて大きな損失ではないだろうか。

参考文献

NIRA総合研究開発機構(2015)「高齢者が働く社会」わたしの構想No.9
NIRA総合研究開発機構(2016)「シニア世代の能力を生かせ」わたしの構想No.20

執筆者

渡邊翔太(わたなべ しょうた)
NIRA総合研究開発機構研究コーディネーター・研究員

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